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SDP問題の主双対内点法では、探索方向パラメータ
を選び下記の条件を満たす
中心パス上の点
をターゲットとし、そのNewton方向に
進む。
 |
(5) |
一般に、
は対称行列でなく、
系(5)は
か
ら
への写像となるため、
直接 Newton 法を適用できない。
このため、現在までに様々な探索方向
が提案されてきた。
本論文では、まず MZ 方向族[7]について述べ、
その特殊な場合として、理論的あるいは実用上有用な探索方向として知られている
HRVW/KSH/M 方向[4,5,6]
や NT 方向[8]
あるいは AHO方向[1]について述べる。
MZ方向族[7]:
任意の正則行列
に対し、
を以下のように定義する。
行列
はスケーリング行列の役目をし、
は
スケーリングされた行列
の対称化に相当する。
このとき、
は
に対する線形操作であることを注意しておく。
系 (5) の
を
に
置き換えると以下の新しい系を得る。
 |
(6) |
この系にNewton法を適用すると、探索方向
は
以下の線形方程式系の解となる。
 |
(7) |
ただし、
,
,
である。
1つ目の等式が主問題の実行可能性、2つ目の等式が双対問題の
実行可能性、3つ目の等式が相補性に対応している。
この線形方程式系(7)は、対称化Kronecker積を使って
書き直すことができる。
 |
(8) |
ここで、
は対称行列となることに注意する。
なお、任意の行列
の 対称化 Kronecker 積
は、
任意の対称行列
に対し、
を満たす
写像として定義される。
よって、対称化 Kronecker 積
は、
となる写像である。
対称化Kronecker積の諸性質については[11]等を参照されたい。
この線形方程式系(8)は、
と
を掃き出すことにより、
以下の次元の小さな線形方程式系に帰着させることができる。
 |
(9) |
ただし、
である。
この方程式系の一般的な解法については[]を参照されたい。
以下では、正則行列
に特定の行列を代入することによって、
HRVW/KSH/M方向, NT方向, AHO方向の3つの探索方向を導くことにする。
HRVW/KSH/M 方向[4,5,6]:
これは、
MZ 方向族の
として
を採る場合に相当する。
このとき、HRVW/KSH/M 方向
は以下のようにして求めることができる。
 |
(10) |
ただし、
つまり、まず行列
の各要素を計算し、その行列を係数行列とする
線形方程式系を解くことにより
を計算する。
その後、
、
、
を順次計算する。
この場合、線形方程式系の
係数行列
が正定値行列になっていることを付け加えておく。
NT方向[8]:
行列
を
と定義すると、NT方向はMZ方向族の
として
を採る場合に相当する。
このとき、NT方向
は以下のようにして求めることができる。
 |
(11) |
ただし、
行列
を求めた後は、NT方向の計算方法はHRVW/KSH/M方向の計算方法
と同様である。
よって、HRVW/KSH/M方向とNT方向の計算量やメモリ使用量は
あまり変わらない場合が多い。
また、この係数行列
も正定値行列となっている。
AHO 方向[1]:
これは、MZ 方向族の
として
を採る場合に相当する。
このとき、AHO 方向
は以下のようにして求めることができる。
 |
(12) |
ただし、
HRVW/KSH/M方向やNT方向の計算と同様に、
まず行列
の各要素を計算し、その行列を係数行列とする
線形方程式系を解くことにより
を計算する。
その後、
、
を順次計算する。
しかし、係数行列の各要素の計算あるいは
の計算の中に
の項がある。
このため、Lyapunov方程式 を解く必要があるが、
この方程式を解くことは計算量の点でそれほど容易ではない。
よって、実用的な計算にはAHO方向は余り利用されない。
なおAHO方向の場合、線形方程式系の係数行列
は
対称行列とならないことに注意する。
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